脆弱性 / OPENSSL / CVE-2026-54876
OpenSSL 4.0/3.6のOCSP検証にメモリリーク — 悪意あるTLSサーバーへの接続でメモリ枯渇の恐れ(CVE-2026-54876)
OpenSSL Projectは2026年8月5日、OCSPレスポンス検証におけるクライアント側のメモリリークの脆弱性(CVE-2026-54876)を公表した。OCSP応答チェックを有効にしたクライアントが悪意あるTLSサーバーに繰り返し接続すると、メモリが枯渇してサービス不能(DoS)に陥る可能性がある。影響を受けるのはOpenSSL 4.0と3.6で、修正は次期リリース(4.0.2/3.6.4)に含まれる予定だ。
OpenSSL Projectは2026年8月5日、OCSPレスポンス検証におけるクライアント側のメモリリークの脆弱性を公表した(CVE-2026-54876、深刻度は「Low」)。悪意あるTLSサーバーが細工したOCSP応答を送ることで、接続のたびにクライアントのメモリを消費させられる。長期間稼働するクライアントが繰り返し接続するとメモリが枯渇し、サービス不能(DoS)に陥る可能性がある。
日本では、JPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)と情報処理推進機構(IPA)が2026年8月7日付で「Japan Vulnerability Notes(JVN)」を公開し、注意を呼びかけている(JVNVU#92139835)。
OCSPとは何か
OCSP(Online Certificate Status Protocol)は、TLSサーバーが提示する証明書が失効していないかを確認する仕組みだ。サーバーが証明書と一緒にOCSP応答を同封する「OCSPステープリング」と呼ばれる方式もある。今回の脆弱性が影響するのは、クライアント側でOCSP応答チェックを有効にしているアプリケーションに限られる。
何が起きるのか
攻撃者は悪意あるTLSサーバーを用意し、SingleResponse(証明書ごとの失効情報)を1件も含まないOCSP応答を送る。OpenSSLはこの応答を「正しい形式」として受け入れ、OCSP_BASICRESP構造体のメモリを確保する。ところが、このケースでは早期リターン(関数からの早期脱出)が発生し、確保したメモリを解放する処理がスキップされてしまう。これがメモリリークの原因だ。
さらに、攻撃者はBasicOCSPResponseのcertsフィールドに偽の証明書を詰め込むことで、1回のTLSハンドシェイクあたりのリーク量を増幅できる。監視システムや常時接続のサービスなど、長期稼働するクライアントが悪意あるサーバーに繰り返し接続すると、時間の経過とともにメモリが枯渇してDoSに至る。この脆弱性は、CWE-401(メモリの有効期間終了後の解放漏れ)に分類される。
影響を受けるバージョン
- 影響あり: OpenSSL 4.0、3.6
- 影響なし: OpenSSL 3.5、3.4、3.0、1.1.1、1.0.2(該当する機能が存在しないため)
- OCSP応答チェックはデフォルトでは無効。「X509_V_FLAG_OCSP_RESP_CHECK」または「X509_V_FLAG_OCSP_RESP_CHECK_ALL」の検証フラグを明示的に有効にしたクライアントだけが影響を受ける
- FIPSモジュールへの影響はなし(影響のあるコードはFIPSモジュールの境界の外にある)
多くの企業システムで使われているOpenSSL 3.0系や1.1.1系は影響を受けない。まず自環境のバージョンを確認することが、過度な対応を避ける第一歩になる。
修正状況
修正は、OpenSSL 4.0系の次期リリース「4.0.2」と3.6系の「3.6.4」に含まれる予定だ。公開時点(2026年8月11日)ではどちらも未リリースで、OpenSSL Projectは「深刻度が低いため、この問題のためだけの緊急リリースは行わない」としている。gitリポジトリには修正済みコミットが公開済みだ。
- 4.0系向け修正: コミット d8c5104(2026年6月29日付)
- 3.6系向け修正: コミット 155b5fe(2026年6月29日付)
報告者はBhabani Sankar Das氏(2026年6月15日)とZhenzhe Shao氏(同年6月19日に独立発見)。修正の開発はMounir Idrassi氏が担当した。
企業が今やるべきこと
- 利用中のOpenSSLバージョンを確認する — 「openssl version」コマンドで確認できる。4.0系または3.6系を利用している場合のみ対応が必要
- 4.0.2 / 3.6.4のリリース後に計画的に更新する — 深刻度はLowで緊急性は高くない。ただし、OCSP応答チェックを有効化しているクライアントは、リリース後できるだけ早く更新対象に含める
- OCSPチェックを有効化しているアプリケーションを棚卸しする — X509_V_FLAG_OCSP_RESP_CHECK系フラグを使用している自社アプリケーションを洗い出す
- 外部サーバーに繰り返し接続するTLSクライアントのリスクを評価する — 監視サービスや定期接続を行うシステムが悪意あるサーバーに接続する状況を想定し、影響を確認する
この脆弱性は「発見・修正された事実」として冷静に対処すべきものだ。影響範囲はOpenSSL 4.0/3.6と、OCSPチェックを明示的に有効化したクライアントに限定され、深刻度もLow。まず自環境のバージョンと設定を正確に把握し、修正版のリリースに備えるのが基本になる。
出典: OpenSSL Security Advisory [5th August 2026](CVE-2026-54876) / JVN: JVNVU#92139835(JPCERT/CC・IPA) / OpenSSL git コミット d8c5104(4.0系修正) / OpenSSL git コミット 155b5fe(3.6系修正)
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