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脆弱性 / VULNERABILITY / OPEN SOURCE AV

ClamAVに7件のメモリ破壊系脆弱性 — 細工したファイルでスキャン停止、修正版1.5.4/1.4.6が公開済み

オープンソースのアンチウイルスエンジン「ClamAV」に7件の脆弱性が見つかり、修正版1.5.4と1.4.6が2026年8月7日に公開された。zip・PDF・Mach-O・XAR・GPT・PESpinの各パーサーにメモリ破壊の不備があり、認証なしのリモート攻撃でスキャン処理を停止させられる。Cisco Secure Endpoint製品にも影響する。

2026年8月7日、オープンソースのアンチウイルスエンジン「ClamAV」の開発チームは、セキュリティ修正版「1.5.4」と「1.4.6」を公開した。同日、Ciscoも自社製品(Secure Endpoint)への影響を伝えるセキュリティアドバイザリを公表し、8月10日に更新している。

ClamAVとは何か

ClamAVは、Linuxサーバーなどで広く使われるオープンソースのアンチウイルスエンジンだ。メールゲートウェイやファイル共有サーバー、クラウドサービスなど、多くの製品やサービスに組み込まれている。Ciscoのエンドポイントセキュリティ製品「Secure Endpoint」(旧AMP for Endpoints)も、スキャンエンジンとしてClamAVを利用している。

何が起きるのか

今回見つかったのは、特定のファイル形式を解析する「パーサー」と呼ばれる部分のメモリ処理の不備だ。zipやPDFなど、細工されたファイルをスキャンさせると、パーサーのメモリ破壊(領域外への書き込みや二重解放など)が原因でスキャンプロセスが異常終了する。結果としてアンチウイルスのスキャン処理全体が停止する(DoS=サービス妨害)。

攻撃者は、悪意あるファイルをメールや共有フォルダ経由でスキャンさせればよい。認証もユーザーの操作も不要で、遠隔から攻撃できる点が注意すべきポイントだ。

CVE 対象パーサー 問題の内容 影響を受けるClamAV 修正版
CVE-2026-20337 zip ヒープ領域外への書き込み 1.5.0〜1.5.3 1.5.4
CVE-2026-20338 zip 二重解放(ダブルフリー) 1.5.0〜1.5.3 1.5.4
CVE-2026-20339 PESpin 整数オーバーフローによる領域外書き込み 0.90〜1.5.3 1.4.6 / 1.5.4
CVE-2026-20345 GPT スタック領域外の読み書き 0.98.2〜1.5.3 1.4.6 / 1.5.4
CVE-2026-20346 PDF 整数アンダーフローによるクラッシュ 1.4.5以前、1.5.0〜1.5.3 1.4.6 / 1.5.4
CVE-2026-20347 Mach-O 未定義動作・整数オーバーフロー 1.4.5以前、1.5.0〜1.5.3 1.4.6 / 1.5.4
CVE-2026-20348 XAR 過剰なメモリ確保 0.98.1〜1.5.3 1.4.6 / 1.5.4

7件はいずれも修正済みで、1.5系は1.5.4、1.4系は1.4.6で修正されている。影響範囲はバージョンごとに異なるため、自環境のバージョンを確認してほしい。なお、1.4.6は1.5.0以降のzip関連2件(CVE-2026-20337、20338)には対応していない点に注意が必要だ。

Cisco Secure Endpointへの影響

Ciscoのアドバイザリ(cisco-sa-clamav-WuuvVd26)によると、影響を受けるのはSecure Endpoint Connector(Windows / Linux / Mac版)。深刻度は次の通りで、回避策は存在しない

  • Windows版: CVSS 7.5(高) — スキャン処理が特権コンテキストで動作するため
  • Linux / Mac版: CVSS 5.3(中) — 低い権限で動作するため

修正版コネクタの提供は2026年8月中に予定されている(Secure Endpoint Private Cloud自体は影響を受けないが、配布されるコネクタは更新が必要)。修正が公開されるまでは、Windows版コネクタを運用している環境は特に注意して監視してほしい。

併せて修正された問題

今回のリリースでは、上記7件以外にも複数の問題が修正されている。

  • CVE-2025-8088 — Windows版に同梱されるUnRARライブラリの問題。NTFSの代替データストリーム(ADS)名にパス区切り文字を許容し、一時スキャンディレクトリの外にファイルを展開されうる
  • clamdのSTATSコマンド — スキャンと並行実行時のスレッド競合により、プロセスメモリの漏えいやデーモンのクラッシュが起きうる
  • FreeBSD版の隔離機能 — 隔離(quarantine)時の安全な移動・削除処理の復旧
  • FIPS環境でのOpenSSLライブラリコンテキストのリーク、Rust依存ライブラリの脆弱性(RUSTSEC-2026-0204)など

発見者

脆弱性は、GitHub Security LabのKevin Stubbings氏、Tencent Xuanwu LabのTianchu Chen氏、Yazdan Soltani氏、Tristan氏(@TristanInSec)、Daggolu Rakesh氏、leduckhuong氏、Feng Xue氏ら複数の研究者によって報告された。

今、何をすべきか

  1. バージョンの確認 — 運用中のClamAVが1.5.3以前、または1.4.5以前の場合は更新対象。clamscan --version などで確認する
  2. 更新の適用 — 1.5系は1.5.4、1.4系は1.4.6へ更新する。Dockerコンテナで運用している場合は、Alpine / Debianイメージを更新する
  3. Cisco Secure Endpoint利用者は — 修正コネクタの提供(8月中予定)を待ち、公開され次第速やかに適用する
  4. clamdの露出確認 — スキャンデーモン(clamd)をネットワークに公開していないか確認する。公開している環境は、今回のDoS攻撃の直接の標的になりうる

ClamAVは「無料で使えるアンチウイルス」として、メールサーバーやファイル共有の裏方で静かに動いていることが多い。だが、停止すればメールの受信処理やファイル配信が止まる。「裏方だから」と放置せず、更新の手順を今のうちに決めておくことが、この脆弱性への最善の備えだ。

出典: ClamAV Blog — ClamAV 1.5.4 and 1.4.6 security patch versions published(2026年8月7日) / Cisco Security Advisory — ClamAV Vulnerabilities Affecting Cisco Products: August 2026(cisco-sa-clamav-WuuvVd26) / NVD — CVE-2026-20337 / NVD — CVE-2026-20338 / NVD — CVE-2026-20339 / NVD — CVE-2026-20345 / NVD — CVE-2026-20346 / NVD — CVE-2026-20347 / NVD — CVE-2026-20348

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